建築士の豆知識!わかりやすい「9つの建築構造ガイド」

一級建築士の豆知識。建築物の構造には様々な種類があります。その中でも主な建築構造を9つピックアップして解説。どんな建築物にどのような構造方式を採用すればいいか、これを見れば一目瞭然です。わかりやすい9つの建築構造ガイドで、適切な構造方式を選択しましょう!

 

(1)木造

日本の伝統的な建築構造といえば「木造」。従来の軸組工法から、海外から持ち込まれたツーバイフォー工法まで、木造の中でも様々な工法があります。木造のメリットはその安さと、工期の短さ。逆にデメリットは、木材を利用しているので、耐火性能の低さです。結果、大規模なものも構造的には可能ですが耐火性能の問題があるため、採用される建築物は小規模な住宅やアパートが主となります。

 

(2)CB造(Concrete Block/コンクリートブロック造)

日本の住宅でもよく見られる、通称「CB造」ことコンクリートブロック造。コンクリートブロックを積み上げ、壁を作る構造です。ブロックの中には鉄筋やセメントを配することでその強度をアップさせます。ただし、床はコンクリートブロックで造ることはできませんので、CB造は平屋建てがほとんどです。結果、小規模な住宅が主になりますが、コンクリートブロック自体はホームセンターでも売っているほどなので、安価で早い工期が実現可能です。

 

(3)軽鉄造(軽量鉄骨造)

小規模な集合住宅で多く採用されている、通称「軽鉄造」こと軽量鉄骨造。メリットは木造並みの安さと、部材の多く工場生産できるので、精度の高さと工期の早さです。木造だと現場頼みになってしまいますが、この軽鉄造ならマニュアル通りに建設できるので、人件費の面でコストを安くすることができます。ただし耐火性能はあまり高くないので、小規模な建築物に限られます。

 

(4)S造(Steel/重量鉄骨造)

先の「軽量鉄骨造」に対して、H鋼など重量感がある鉄骨部材を利用する、通称通称「S造」こと重量鉄骨造。「S」はもちろん「Steel(鋼)」の略です。鉄骨自体の耐火性能は軽鉄造に比べて優れますが、さらに「耐火被覆」と呼ばれる仕様が可能なので、さらに耐火性能を高めることができます。軽鉄造同様に部材の精度が高く、工期を短縮できるので、高層建築に多く利用されます。超高層建築の場合は、ほとんどがこのS造です。ただし、防音性能に難があるので、集合住宅にはやや不向きな構造です。

 

(5)RC造(Reinforced Concrete/鉄筋コンクリート造)

木造と並んでメジャーな構造が、通称「RC造」こと鉄筋コンクリート造。「RC」とは「強化されたコンクリート」という意味で、コンクリート内部に鉄筋を入れて強化した構造です。小規模なものから高層に至るまで、様々な建築物に利用できます。耐火性能に優れ、かつ防音性能に優れるので、集合住宅ではよく用いられる構造です。コンクリートが固まるまでの時間を要するので、工期が長めになります。また、コンクリートを現場で作成しますので、精度のばらつきが生じる可能性があります。

 

(6)SRC造(Steel Reinforced Concrete/鉄骨鉄筋コンクリート造)

コンクリートに、鉄筋だけではなく、鉄骨も入れて強化したのが、通称「SRC造」こと鉄骨鉄筋コンクリート造。基本的には、RC造と同じ性能ですが、鉄骨を入れている分、強度が高いのが特徴。RC造よりさらに高層化も可能ですし、柱の本数も減らすことができるので、プランニングの自由度も高いです。ただし、鉄骨分だけRC造よりコストが高くなり、工期も長くなります。SRC造は、集合住宅でも大規模なものに適しており、さらに病院などの公共建築物のような大規模建築物に向いています。

 

(7)PC造(Precast Reinforced Concrete/プレキャスト鉄筋コンクリート造)

通常のコンクリート造は、現場でコンクリートを作るので、工期が長くなり、さらに精度の問題も生じます。それを解消させたのが、通称「PC造」ことプレキャスト鉄筋コンクリート造。工場で作成したコンクリート部材を、現場では組み立てるだけの工法です。つまりのところ、プラモデルのような工法です。精度も品質も高く、現場では組み立てるだけなので、工期も短くできる構造です。ただしコストが高く、大きな規模の建築物ではないとメリットは低め。超高層マンションでよく使われる構造です。

 

(8)CFT造(Concrete Filled steel Tube/コンクリート充填鋼管造)

S造並みの超高層が可能で、RC造のような防音性も確保できるのが、通称「CFT造」ことコンクリート充填鋼管造。S造の鋼管柱の中にコンクリートを充填する、比較的新しい構造です。基本はS造なので、超高層向きの構造工法でありつつ、コンクリートも使うので、防音性能や耐火性能にも優れる、一石二鳥の構造です。超高層の中でもさらに高層化を図りたい建築物で採用されています。ただし、コストは最も高い部類で、超高層でも50階を超える超超高層レベルではないと、採算的には厳しい構造です。

 

(9)CLT造(Cross Laminated Timber/直交集成板工法)

最後に紹介するのがまさに最新構造の、通称「CLT造」こと直交集成板工法です。基本的には木造ですが、特殊な手法で使用する木材の強度を高め、高層建築にも利用可能です。日本ではまだ実績が少ないですが、海外では既に高層マンションなどで採用されており、日本でも期待される工法です。メリットは、木造なので建築物に温かみがあり、また柔らかい構造なので、地震などの震動を建築物が吸収でき、耐震性にも優れます。今後は木材の耐火性能の向上次第で、超高層建築物にも利用されることが期待されています。

 

他にも「組積造」や大規模建築の「大架構構造」などがありますが、日本の住宅やオフィスなど、一般的な建築構造ならこの9つ。戸建て住宅なら「木造・CB造・RC造」、小規模アパートなら「木造・軽鉄造・RC造」、中規模マンションなら「RC造・SRC造」、オフィスなら「RC造・SRC造・S造」、超高層なら「S造・PC造・CFT造」ということになります。そして、今後は木造でも高層建築が可能な「CLT造」が注目と言えるでしょう。

 


ライタープロフィール
ペンネーム MISAKI

一級建築士。建築設計事務所に8年在籍、マンションから再開発まで様々な建築の意匠設計を手がける。
マンションリフォームマネージャーなる資格も有し、リフォームやリノベーションにも精通。
現在はIT系ビジネスに従事し、ネットを駆使して建築や不動産をはじめとする様々な情報を配信。

 

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