就業履歴や保有資格を一元化!建設キャリアアップシステムは建設業をどう変えるのか?

システムにより職人のスキルが可視化される

 2017年11月6日、建設キャリアアップシステム運営協議会の第2回総会で建設技能者のスキルを蓄積・管理する「建設キャリアアップシステム」の料金体系が決議されました。
今回は「建設キャリアップシステム」の概要や、企画の背景、システムがどのような影響をもたらすか解説したいと思います。
 
 

高齢化により建設業従業者が激減

 日本全体として人口の減少と高齢化が進む中、あらゆる業種で仕事の担い手の減少が進んでいます。
建設業も多分にもれず、建設業就業者数は1997年の685万人をピークに、2015年では500万人と27%も減少しています。高齢化の影響はさらに深刻で、55歳以上が約34%、29歳以下が11%となっています。
これは全産業ベースと比較すると、55歳以上で約5pt高く、29歳以下では逆に約5pt低くなっています。さらに60歳以上の建設業従業者は約78万人おり、10年後には大半が引退するとすると、建設業の担い手不足はさらに深刻化していきます。
またこの引退する高齢の建設業従業者は、長年培った技術を持っている方が多く、技術の喪失という面でも非常に大きい影響があります。
 
 

経験やスキルが可視化されにくい建設業

 一方で賃金的な面でも建設業は特有の課題を抱えていました。
製造業全体と比較すると、建設業の年齢別の賃金のピーク時期は早く、40歳前後に到来します。つまり長年積み重ねた現場でのスキルや管理能力、教育など年々重なっていく経験が評価されにくい構造であると考えられます。
また建設業ならではですが、一つとして同じ現場がないこともあり、技能者自身の能力についても、業界で一貫したルールや仕組みが存在していませんでした。結果として前述の若手の従業者の比率が低いことにも繋がっていると言えるでしょう。
若年層が集まるIT業界はデザインやプログラミングなどポートフォリオを持つことが多いので、スキルと経験の可視化されやすさでは大きな違いが出ていますね。
 
 

建設キャリアアップシステムとは

 高齢化による技術者の喪失、経験・スキルの埋没化という前述の2つの課題を解決するために、建設キャリアアップシステムは誕生しました。
官民一体のコンソーシアムを設立し、技能者の経験やスキルの評価軸を揃えていき、建設キャリアアップシステムはその経験・スキルの見える化を図るためのインフラとなります。
具体的には一人一人の建設業従事者が本人確認を行った上で、システムに登録をします。その上でIDが付与されたICカードが交付され、そのICカードにこれまでの現場経験や職種、役割、資格や講習経験などが蓄積されていきます。
その結果として、建設会社側では建設業従事者のスキルや経験が可視化されることによる、現場プロジェクトの効率的な運営が進んでいくと考えられます。
また建設業従業者としては、経験やスキルが蓄積されたポートフォリオのような形でアピールしていくことが可能になるでしょう。

建設キャリアアップシステム解説画像

建設キャリアアップシステムは事業者にも技能者にもデメリット


 

建設キャリアアップシステムの導入ステップは?

 現在の建設キャリアアップシステムについては、開発がすすんでおり、2018年1月から3月にかけて登録用紙が配布され、2018年4月以降順次先行登録、本登録が開始されていく予定です。
目標登録数としては、初年度が100万人、導入5年目には全建設業従事者の登録を掲げています。誰にとってもメリットのあるシステムではありますが、非常にチャレンジングな目標でもあります。
システムの利用コストについては、建設業従事者は技能者登録と更新時の登録料・更新料のみとなります。一方事業者については5年ごとに支払う登録料に加え、申請する管理ID数ごとに支払う「管理ID使用料」と建設業従事者が就業履歴を取得する際に都度支払う「現場利用料」の2種類があります。
今後建設業従事者はもちろんですが、事業者に対しても、しっかりとメリットを訴求していくことがシステム利用が拡大する肝になりそうですね。
 
 

将来的な建設業への影響は

 建設キャリアアップシステムはあくまでもインフラとなるため、登録者と利用者が拡大していくことでメリットはどんどん増大していくでしょう。
例えばあるプロジェクトに対し、どの建設業従業者がどの範囲でどれくらいの期間関わったかなどが可視化され、トレーサビリティが実現されていきます。
その結果建設業特有の多重請負構造がシンプルになって効率化されたり、カスタマーとの距離が近づいていくことも十分に考えられます。結果として建設業が身近になり、建設業で働きたいという若年層が増えていくことに繋がっていけば、業界としてさらなる進歩が望めるのではないでしょうか。本格導入まであと半年程度ですが、どのような取り組みを通して、システムが広がっていくか、楽しみにしたいと思います。
 
 

(参考)
 国土交通省
  http://www.mlit.go.jp/
 建設キャリアアップシステム
  http://www.kensetsu-kikin.or.jp/ccs/index.html
 日刊建設工業新聞 2017/11/17
  http://www.decn.co.jp/?p=95205

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