意外に見逃されている!?建設工事の下請発注時の注意点とは??

建設業法はその目的の1つとして「建設工事の請負契約の適正化」を挙げています。そのため、建設業法には建設工事の請負契約に関する様々な規定が存在します。請負契約の適正化を図ることによって、発注者や下請の建設業者を保護し建設業の健全な発達を促進させることが可能となります。建設工事を下請の建設業者に発注するために建設業者はどのような点に注意する必要があるのでしょうか?また、建設工事の請負契約の適正化を図ることで、どのようなメリットがあるのでしょうか?今回は、建設工事を下請の建設業者に発注する際の注意点についてご説明します。

建設工事の請負契約の原則

建設業法には「建設工事の請負契約の原則」として「契約当事者双方が対等な立場において公正な契約を締結し、その履行は信義に従い誠実に行わなければならない」旨が規定されています。また、契約を締結する際に作成する請負契約書についても細かな規定が存在します。具体的には「契約の目的(工事内容)」「請負代金の金額及びその支払い時期と支払い方法」「工事の着手及び完成の時期」「危険負担」「瑕疵担保責任」「債務不履行の場合における違約金」といった事項が記載されています。請負契約書にこれらの基本的な事項が記載されていない場合、後に解釈の違い等で契約当事者間において紛争が起きてしまうおそれがあるため、契約書の内容について十分に確認する必要があります。請負契約書については、国土交通省のHPにある「建設工事標準請負契約約款」を参考にすると良いと思われます。「民間工事用」「公共工事用」「請負工事用」と様々な種類があるためとても便利です。

建設工事の請負契約における禁止事項

「建設工事の請負契約の適正化」を図るために、建設業法においては建設工事の請負契約における禁止事項についても規定しています。主な禁止事項としては「不当に低い請負代金の禁止」「不当な使用資材等の購入強制の禁止」といったものが挙げられます。前述したとおり、本来であれば契約当事者双方は対等な立場であるべきです。しかし、実情としては元請の建設業者が下請の建設業者に対し自身の取引上の地位を利用して不当に低い請負代金で建設工事を発注する事例がしばしば見られます。「不当に低い」とは、建設工事を施工するために通常必要と認められる原価に満たない金額のことをいいます。そのため、こうした事態を防ぐために建設業法において禁止事項として規定されています。ただし、請負代金が4000万円(建築一式工事においては6000万円)以上となる建設工事を下請の建設業者に発注しようとする場合においては「特定建設業許可」を取得する必要があるため注意されて下さい。また、建設業法においては元請の建設業者が自身の取引上の地位を利用して下請の建設業者が使用する資材の購入先を指定したり、資材の購入を強制させたりすることについても禁止事項として規定されています。建設工事の請負契約を締結する際には、これらの禁止事項に該当する条項がないか今一度ご確認下さい。

建設工事の見積期間について

建設業法においては、建設工事の請負代金の見積期間についても規定が設けられています。建設工事の見積期間は請負代金の金額ごとにその目安が決められています。見積期間は請負代金の予定価格が500万円に満たない建設工事の場合は1日以上、予定価格が500万円以上5000万円未満の建設工事の場合は10日以上、予定価格が5000万円以上の建設工事の場合は15日以上となっています。ただし予定価格が500万円以上の建設工事においては「やむを得ない事情」がある場合に限り、見積期間を5日以内に限り短縮することが可能です。契約当事者間において十分に話し合った上で見積期間を決定するようにしましょう。

建設工事の請負契約の適正化によるメリット

建設工事の請負契約の適正化を図ることで、元請の建設業者と下請の建設業者との関係が適正なものになり、建設工事を円滑かつ効率的に行うことができるようになります。無理のない適正な請負契約を締結することで現場へのしわ寄せがなくなり、安全面においても大きなメリットが生まれます。現場で働く社員に確実に経験を積ませることもでき、人材育成の面におけるメリットも生まれます。人材の育成は公共工事を受注するための要件となる「経営事項審査」においても高く評価されますので力を入れておくことが望ましいでしょう。

「建設工事の請負契約の適正化」は建設業法における目的の1つであるため、建設業法には建設工事の請負契約に関する様々な規定が置かれています。「請負契約書に記載するべき内容」「不当に低い請負代金の禁止」「不当な使用資材等の購入強制の禁止」「請負代金の見積期間の目安」等の規定を置くことにより下請の建設業者の権利利益を保護しています。建設工事を下請の建設業者に発注しようとする際には、これらの規定について十分に注意して請負契約を締結する必要があります。


ライタープロフィール
ペンネーム 紅裂(すざく)
 
現役行政書士・フリーライター。
行政書士として建設業法・農地法関連の許認可業務や契約書作成・相続等の民事法務を主に取り扱う。
行政書士としての知識や経験を活かし、フリーライターとして法律や各種の行政手続きに関する記事を主に執筆

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