一般建設業許可を取得するための要件とそのメリットとは?

 建設業法は、一定の要件に該当する建設工事を行う建設業者に対して一般建設業許可を取得する必要がある旨を定めています。
一般建設業許可を取得していない建設業者は、建築一式工事においては「工事1件の請負代金が1500万円以上となる場合」又は「請負代金に関わらず延べ面積が150㎡以上となる木造住宅の工事を行う場合」、建築一式工事以外の建設工事においては「工事1件の請負代金が500万円以上となる場合」に建設工事を行うことができません。
一般建設業許可を取得することで、これらの規模の大きな建設工事を行うことが可能になります。では、一般建設業法建設業許可を取得するためにはどのような要件を満たすが必要があるのでしょうか?今回は、一般建設業許可を取得するための要件やそのメリット・ポイントについてご説明します。
 
 

専任技術者の配置

 専任技術者(専技)とは、許可を取得しようとする建設業の業種に関しての専門知識を有している者のことです。専門知識を有する専技を営業所に配置することで、より大規模な建設工事を行うに当たり必要となる高度の「技術的要件」を満たすことができます。また、建設工事の請負契約を適正に締結することができるように、専技は勤務中は営業所に常駐している必要があります。ただし、専技になるためには主に「許可を取得しようとする業種について学校で所定の学科を卒業し、3年又は5年の期間実務を経験している」「許可を取得しようとする業種について10年の期間実務を経験している」「許可を取得しようとする業種に関する資格を有する」といった3つの条件があり、これらのうちいずれか1つを満たしている必要があります。
ただし、実務経験によって専技になる場合、1度許可申請に使用した期間は他の業種の実務経験期間として使用できないため注意が必要です。
社員を募集する際においては学歴や資格等の条件を設ける、自社の社員に対して必要となる資格を取得させる、といった取り組みを行い、建設工事を適切に施工するために必要となる専門知識を持った人材を確保・育成するように心がけましょう。
 
 

経営業務の管理責任者の配置

 建設業における経営業務は他業種と異なり非常に独特なものであるため、経営業務の管理責任者(経管)を配置することが許可を取得するための要件となっています。
経管になるためには、一定の期間において建設業の経営業務を経験していることが必要となります。許可を取得しようとする業種の経営業務を「役員(執行役員以外)・事業主・支配人として5年」又は「執行役員等の経管に準ずる地位として5年」若しくは「経営業務を補佐した経験(事業主の妻子等)が6年」行っている場合、許可を取得しようとする業種について経管となることができます。
許可を取得しようとする業種を経営した経験が無い場合は、建設業のいずれかの業種について「役員(執行役員以外)・事業主・支配人として6年」の経営業務の経験があれば、許可を取得しようとする業種の経管となることができます。また、専技と同様に経管も営業所に常駐していなければなりません。
 
 

財産的基礎の要件

 建設工事を行うためには、材料費や作業員の人件費、建設機械に充てる費用等、非常に多くの資金が必要となります。したがって、一般建設業許可を取得しようとする場合、財産的基礎についても満たしている必要があり、具体的には「自己資本の額が500万円以上ある」又は「500万円以上の資金を調達する能力を有する」ことのいずれかが求められています。一般建設業許可申請を行う際には今一度、自社の自己資本の金額を確認されて下さい。
 
 

誠実性があり欠格要件に該当していないこと

 「誠実性がある」とは、建設工事の請負契約の締結や履行において「詐欺や脅迫等の法令違反となる不正な行為」又は「請負契約の規定に違反する等の不誠実な行為」をしていないことを言います。また、一般建設業許可を取得するためには「欠格要件に該当していないこと」も必要となります。
欠格要件に該当する者としては「成年被後見人若しくは被保佐人又は破産者で復権を得ない者」「暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者」といった者が挙げられます。また、これらの要件を満たすことで自社の信用を大きく上昇させることにも繋がります。
 
 

一般建設業許可を取得するべきタイミング

 ここまで一般建設業許可の取得に必要となる要件についてお話しして参りましたが、一般建設業許可はどのタイミングで取得するのが良いのでしょうか?前述した通り、一般建設業許可を取得するためには専技と経管の配置が必要となります。既にこれらの役職になるための要件を満たしている者がいる場合、一般建設業許可取得のハードルは大幅に下がります。
しかし、これらの要件を満たしている者がいない場合、まずは専技と経管になることのできる者を確保しなければなりません。具体的には、専技であれば短くて3~5年間(所定の学科を卒業した者)、長くて10年間の実務経験を、経管の場合、自社の役員や支配人等に5~6年間の経営業務の実務経験を積ませる必要があります。したがって、自社の営業開始から5~6年を経過したタイミングで一般建設業許可を取得するのが良いと思われます。
 
 
 一般建設業許可を取得するためには主に「専任技術者の配置」「経営業務の管理責任者の配置」「財産的基礎の要件を満たしている」「誠実性があり欠格要件に該当していない」といった要件を満たしていることが求められます。特に「専技」と「経管」については誰でもなることができる訳ではないためそれぞれ建設業法に規定された条件を満たす人材を確保することが必要となります。また、欠格要件についても非常に細かい規定があるため注意する必要があります。一般建設業許可を取得することで大規模な建設工事を行うことができるようになり、また、建設業者としての信用や評価を上昇させることにも繋がるといったメリットがあります。
建設業に関わる以上、取得が避けられない認可になりますので、できるだけ早い取得を目指しましょう。


ライタープロフィール
ペンネーム 紅裂(すざく)
 
現役行政書士・フリーライター。
行政書士として建設業法・農地法関連の許認可業務や契約書作成・相続等の民事法務を主に取り扱う。
行政書士としての知識や経験を活かし、フリーライターとして法律や各種の行政手続きに関する記事を主に執筆

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