一級建築士の豆知識。今回はマンションの専有部分と共用部分の線引きについて解説します。マンションと言えば住居部分が「専有」で、廊下や階段などが「共用」という認識がありますが、実は住戸内にも共用部分があるんです。その線引きを知らないとトラブルになる可能性も!?
マンションの共用部分と専有部分の大まかな線引きとは?
分譲でも賃貸でも、マンションには共用部分と専用部分があり、特に共用部分には様々な制約があります。一般的には誰でも通ることができる、ないし利用することができる部分を「共用」とし、住戸内など特定の人しか入ることができない、ないし利用することができない部分を「専有」としています。
具体的にはエレベーターや階段や廊下は「共用」で、住戸にあるものは「専有」ということになります。住戸を一歩出れば「共用」になりますので、玄関前に植木鉢などを置くのはNGです。気をつけましょう。
実はあのスペースは共用だった!?
住戸内は基本的には「専有」ですが、住戸と同じように利用できる屋外の“バルコニー”は、実は「共用」部分です。特定の人しか利用できないのに何故?と思われるかもしれませんが、バルコニーは他の住戸の避難にも利用することもあり、基本的に「共用」扱いになります。といっても避難利用時以外は、特定の人しか利用できないので、バルコニーは「専用利用可能な共用部分」という位置づけになります。
ただし、バルコニーに動かすことができないものを置くのはNGです。あくまで「共用」なので、すぐに原状復帰できる状態にしていなければなりません。具体的には、植木鉢を置くのはOKですが、バルコニーに土を盛って家庭菜園するのはNGです。もちろんビスを打ったり穴を開けたり、色を塗ったりするのもNGです。気をつけましょう。
扉は共用だった?謎が多いマンションの玄関扉
マンションの住戸と共用廊下の間に必ずある“玄関扉”。実はこの扉は「共用」だったのです。その住戸の人しか使わないのに何故?と思われるかもしれませんが、これには明文化された規定があります。
マンション標準管理規約(単棟型)7条の2の二「玄関扉は、錠及び内部塗装部分を専有部分とする。」
つまり、玄関扉そのものは共用で、扉の住戸側の塗装と錠前部分のみ専有部分と言うことになります。その理由は、各住戸が扉を好きなものに変えてしまうと、共用廊下側から見た光景が、統一性のないものになってしまうからです。その結果、外からは見えない住戸側の塗装だけ、専有部分ということになります。
また錠前については、住戸のセキュリティに関わるので、専有部分扱いで変更可能です。しかしドアノブは共用扱いで、自由に変更ができません。ドアノブと錠前がセットの商品は、基本的に取り付け不可と考えましょう。
窓もガラスも実は共用!しかし逆手に取るとメリットも!?
玄関扉と同じで、住戸と外の間にある“窓とガラス”も、実は「共用」です。こちらも明文化された規定があります。
マンション標準管理規約(単棟型)7条の2の三「窓枠及び窓ガラスは、専有部分に含まれないものとする。」
厳密に言うと割ってしまった窓ガラスを、勝手には修理できないと言うことになります。その理由もあり、窓ガラスには防火性能の有無などが規定されているので、その規定にあったものしか利用できないからです。もちろん建物を外から見た時に、先の玄関扉同様に様々なガラスの色があっては統一性がなくなってしまうからと言うのもあります。
逆に窓ガラスが割れても、その修理費用は「共用」なので自己負担無しになる場合もあります。もちろん自己責任で割った場合はその負担を逃れることはできませんが、外から割られた場合は、基本的に「共用」ですので、修理費は管理組合などが負担してくれることもあります。
注意が必要なのは扉と窓だけ!しかしお洒落なあの内装は要注意!
専有か共用かが難しいのは、外や共用部分から見える部分だけで、住戸内からしか見えない部分は基本的に「専有」になります。住戸内の床も壁も天井も、見える部分は「専有」です。ただし、壁紙など仕上げ下のコンクリートは「共用」なので、コンクリートまで通じるビスや穴開けはNGです。
またコンクリート打ち放しの壁や天井は仕上げがないので、住戸内からしか見えなくても「共用」です。見た目はお洒落かもしれませんが、ビス1つも打てませんので、縛りが多く意外と不便です。
一戸建てなら全てが「専有」なので気にする必要はありませんが、マンションの場合は「専有」と「共用」の線引きを誤ると、大きなトラブルになってしまいます。共用部分にものを置かないのはもちろんのこと、専有部分に思えがちな“扉”と“窓”については特に注意しましょう!あとバルコニーも共用廊下と同じ扱いであることもお忘れなく!
ライタープロフィール
ペンネーム MISAKI
一級建築士。建築設計事務所に8年在籍、マンションから再開発まで様々な建築の意匠設計を手がける。
マンションリフォームマネージャーなる資格も有し、リフォームやリノベーションにも精通。
現在はIT系ビジネスに従事し、ネットを駆使して建築や不動産をはじめとする様々な情報を配信。
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