2013年に「高年齢者雇用安定法」が改正施行されました。
このことにより企業は、65歳までの従業員の中で、希望する者全員を雇用する義務を負う事になり、多くの企業が60歳で定年を迎えた職人さんと再雇用契約を結び、65歳まで働くことができる環境を整えるようになりました。
社会全体の高齢化や、老後の経済的不安を考慮しても、できる限り働くことができる社会制度は今後ますます重要になりそうですね。しかし、このような法律が改正され、再雇用されたからと言って、定年後も現役時代と同じ賃金で同じ内容の仕事をこなせるとは限りません。現場代理人のようなハードな仕事の場合、再雇用の前にはその人の為になる働き方について職人さん側も、企業側も考える必要があります。この記事では、建設業界でも責任が重く、多忙を極める現場代理人の60歳以上の再雇用の現実と問題点についてお伝えします。
仕事のデジタル化に悪戦苦闘?
現代の現場代理人(現場監督)のほとんどの仕事は、デジタル機器なしでは行うことができません。
書類の作成や、工程管理、工事写真の撮影や整理、測定機器、連絡手段など、パソコンやデジタルカメラ、携帯電話、場合によってはタブレットを使いこなす必要があります。便利な一方で、多くの仕事を『アナログの時代』でこなしてきた60歳以上の職人さんが、このデジタル化に馴染めずにいるケースが多々見受けられます。
電子機器を多用する世の中になって何年も経ちますが、未だに馴染めていない職人さんは、機器を使いこなそうとする気持ちを持つことから始める必要がありそうです。時代は変わるものですから、新しいものを頭ごなしに拒まず、柔軟に受け入れる姿勢で仕事を行うことも大切だということが考えられます。
図面が読めなくなる?
老眼によって、60歳を迎える前から細かい文字が見えにくくなるという症状に悩まされることも再雇用時の問題として挙げられます。図面の寸法や仕様書は特に文字が細かいので、読み取りには苦労が伴います。デジタル画面は更に見づらく感じる方が多いようです。ペーパーレスが促される最近のオフィスでは、いちいち印刷するのも経費の無駄遣いと捉えられ、非難の的になりかねません。
老眼鏡やルーペは必需品になりますが、かつて最前線で仕事をこなしていた人が、目を細め、書類に顔を近づけたり離したりしながら図面を必死に読もうとする姿は、部下からしてもあまり見ていたいものではないかもしれません。
物忘れを如何にカバーするか?
更に周囲を困惑させるのは、物忘れが多くなった場合です。
現場代理人の仕事は、施主などから口頭で要望を受けることや、他の職人さんなどから質問をされる機会が多く、記憶力が大切になる仕事です。その場で解決できれば良いのですが、中には持ち帰って解決しなければならない問題もあるかもしれません。
やるべきことを忘れてしまうことや、言った・言っていないで他の社員ともめること、大切な書類を紛失してしまう等、本人に悪気がなくても、物忘れがトラブルに繋がり、結果的にはその人の信頼や評価が下がることもあるのです。トラブルを回避するためには、大切な話をした場合は議事録やメモを残すことや、周囲がサポートすること、本人が自覚して記憶力をカバーする手段を身につけること等が必要になると考えられます。
職人さんは定年前と同じ仕事を行うのは難しい?
先にお伝えしたように、現場代理人の仕事は、世の中に存在するあらゆる職種の中でも極めてハードなものです。
現場代理人である従業員が60歳以上になっても現場代理人の仕事を続ける場合、体の衰えから、あらゆる困難が待ち受けていることは安易に予想できます。現場代理人の再雇用で避けたいことは、現役時代と同じ仕事を続けることで、思うように仕事がこなせないことから自信を喪失してしまうことや、萎縮してしまうこと、周囲からの評価を下げる結果になってしまうこと、体調を崩してしまうことです。
更に、再雇用の職人さんの多くは契約社員や嘱託社員という位置づけなので、正社員時代より賃金が低くなることがほとんどです。このことも、モチベーションを下げることに繋がってしまっているのが現状です。
定年後も愛される現場代理人の働き方とは?
定年後も現役時代の尊厳を保ち、自信を失わず、周囲からも愛される職人さんになるためには、以下のことが必要になると考えられます。
・思い切って責任の重い現場代理人の仕事を行わない
・若手の補佐や育成に努める
・専門的な資格や知識を活かした仕事に就く
(例えば耐震診断員や、建築物の定期点検等)
・責任の軽い仕事を受け入れる
(社内の雑務や、清掃、保全、顧客の雨漏りや水漏れなどの対応)
かつての役職やプライドはおいて、現状を素直に受け入れ、今できる限りの能力を新しい環境で最大限に発揮することで、企業や他の職人さんからも感謝される人材となることができると言えるのではないでしょうか。
企業としても新しい人を採用するよりもその企業で長く勤め、業界を知り尽くし、人間関係も出来ている人物に仕事を任せた方が安心ですよね。60歳以上でも働き続けることが当たり前になりつつある今、高齢者になった時にどの様な自分でいたいかのビジョンを現役時代から明確にして、必要な準備をしておくと安心です。
熟練の職人さんたちも輝ける業界になっていくと良いですね。
(参考)
厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/
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