木造建築と言えば、日本においては法隆寺をはじめとする神社仏閣などの歴史ある古い建築が有名ですね。現代においては、一般的な住宅の構造として主流となっています。
木造建築に寄り添い、長く親しんできたと思われているのが日本の建築業界ですが、木造建築が今世界的に流行していて、日本の建築業界はその流行に遅れをとっていると言われているのが現状です。
この記事では、世界の木造住宅の流行の最先端と、木造建築が流行している理由、日本国内の動向、木造建築の今後の動向についてお伝えします。
木造が流行中。世界の木造建築最先端とは?
木造建築は近年世界的に注目を集め、流行中です。なぜ今、木造建築なのでしょうか。
その理由としては、欧州で開発された新しい木造建築の技術「CLT工法」が挙げられます。CLT工法とは、板の方向をクロスさせて積み重ねた大型の集成板を使った工法のことで、断熱性や省エネ性、強度、耐震性に優れていることが特徴です。CLT工法を用いることで、今まで木造建築とは結びつかなかった高層の建築物が木造を主要構造として実現できるようになりました。地球環境の保全に積極的な欧州をはじめとする各国では、このCLT工法の規格化が積極的に進められています。
高層の木造建築の施工例としては、2017年6月から供用が開始されたカナダ・バンクーバーの「ブロックコモンズ」が高さ58.5mの18階建の高層ビルで、主要構造に木材を利用した建築物としては一時的に世界一の高さを記録しました。更に、2016年10月にはオーストリアで「HoHoウィーン」という24階建のビルが着工しており、こちらは竣工すると主構造に木造を採用したビルとして、世界一の高さとなります。
各地でこの様な木造の高層建築が次々に計画されていることからわかるように、木造建築は世界的に注目を集めているのです。
日本国内の動向は?
日本国内では、戦後、木造建築物が激減したことで荒れてしまった森林の保全や、衰退してしまった林業の再生を図ることが急務となっています。このことから、「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が2010年5月26日公布され、同年10月1日に施行されました。この法律は、従来木材の利用率が低かった公共建築物に対して積極的に木材利用を促し、木材全体の需要を拡大することで森林保全事業を活性化することを目的としています。
この法律を受けて、主要構造を木造とする事例は少ないながらも、東京五輪とパラリンピックの主会場となる新国立競技場をはじめ、公共建築物でも木材が多く使われる事例が国内でも徐々に増え続けています。
木造建築、今後の動向とは?
木造建築の世界的な流行の状況についてお伝えしましたが、建築において重要な要素のひとつにそのコストが挙げられます。大規模な木造建築が今後も普及していくためには、そのコストが民間事業においても現実的であることが重要です。現段階で、海外の木造高層建築のコストはRC造と比較して5~10%高い水準までに収まっているとされています。
今後、施工事例が増えることでこの価格水準は更に下がる見込みで、地球環境の保護が課題とされる中で、木造建築はCO2削減や、森林保護にも有効であることも相まって、今後ますます木造建築は世界的に広がりを見せることが予想されています。
日本国内では、未だこの価格水準には達することは無く、厳しい耐火基準から大規模な建築物の主要部分の木材利用は難しいとする意見もあります。
日本国内で木材の利用を更に推進するためには、地震の脅威も合わせて検討しながら、建設事業を地球規模で考えた法規の整備が必要とされているのかもしれません。
(参考)
日経アーキテクチュア ガラパゴス化?都市木造の目指す道http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/atcl/bldcolumn/14/500180/022000032/
林野庁公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律http://www.rinya.maff.go.jp/j/riyou/koukyou/
CNN.co.jp 木造高層ビルが世界で流行 背景は?
https://www.cnn.co.jp/business/35082322.html
ライタープロフィール
ペンネーム 佐藤 ゆうか
建築業界経験と建築士資格を持ち、現在は子育てに勤しむ
個人で生活育児に関するブログも運営している在宅ママさん
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