一級建築士の豆知識。今回はマンションを設計する際の、柱と柱の間隔こと「スパン」について、その最適な寸法について詳しく説明したいと思います。これを知ればマンションを検討している土地でも、ボリューム検討がよりスムーズにできることでしょう。
マンションならコンクリート系の構造が最適
小規模なアパートメントだと、その構造も木造や軽量鉄骨造も考えられますが、中規模以上のマンションだとそのほとんどがコンクリート系の構造になります。種類としては、コンクリートの中が鉄筋の「RC造」、鉄筋と鉄骨も利用した「SRC造」があり、マンションだとこの2つの構造方式が最適です。構造方式としてはコンクリートを構造体に使用しない鉄骨のみの「S造」もありますが、コンクリートを打たないので防音対策に劣り、マンションではあまり採用されません。
ただし、コンクリート系だと構造体が重くなるので、柱と柱の間隔こと「スパン」の長さが限られます。S造なら10m以上のスパンも可能ですが、コンクリート系だと6mが経済的なスパンと言われています。しかしその6mだと、マンション設計では不便な点も多く出てきてしまいます。
マンション設計で経済的な最適スパンとは?
敷地が十分に広ければ、6mのスパンでもマンション設計には問題ありませんが、都心など敷地の広さが限られる地域では、6mスパンだと少々問題が生じます。その理由は、敷地が狭いと1階部分に駐車場を設けるケースが多くなり、6mスパンだと駐車スペースを確保しにくくなるからです。
一般的に柱サイズは600mm~800mmになるので、6mスパンだと駐車に使える有効スペースは5.2m~5.4mになります。駐車場スペースは幅が2.3m~2.5mあれば計画可能ですので、2台分だと4.6m~5mになり、車を駐車するスペースのみなら6mスパンでも成り立ちます。しかし、問題は「駐車するための車の軌跡」で、6mスパンだと何度も切り返さないと駐車できません。
その軌跡も考慮すると、マンション設計で最適なスパンは「6.4m」と言うことになります。たかが40cm、されど40cmですが、1階部分に駐車場を設ける場合は、その40cmが大きく影響します。マンション計画では、初期の段階ではこの「6.4m」スパンを利用するのがおすすめです。
6.4mスパンは駐車場計画以外にも様々なメリットが!?
1階部分に駐車場を計画するマンションなら「6.4mスパン」の有効性はお分かりになったかと思いますが、1階部分に駐車場を設けないなら「6.4m」にこだわらなくてもいいように感じられます。しかし、この6.4mスパンは駐車場計画以外でも、特に初期のボリューム検討時には様々なメリットがあります。
それは6.4m×6.4mのスパンだと、1スパンあたりの面積が「40.96m2」とほぼ40m2になるので、ボリューム検討しやすいということ。またマンションの住戸設計でも、ワンルームなど1スパンに2戸を計画する場合、幅が3mの場合と3.2mだと住戸内の設計の自由度も大きく変わります。
さらにこの6.4mスパンの半分の「3.2m」は、オフィスモジュールとしても利用できるので、住宅以外の利用も想定される場合にも便利な寸法です。1つの建物でオフィスとマンションが上下に積層した場合はもちろんのこと、再開発のような同じ敷地にマンションとオフィスが同居する場合も、同じスパンなら建築設計もしやすくなります。
マンションのみならず、オフィスでも通用する「6.4mスパン」。建築設計にはいろいろなメリットがあるスパンです。
もちろん全てがこの「6.4mスパン」で上手く行くとは限りませんが、初期のボリューム検討の段階だといろいろな面で重宝するスパンです。とかくマンション設計の場合、地域によっては駐車場設置を義務化する条例があるところが多く、1階部分を駐車場とするケースも多いので、「6.4mスパン」は重宝することでしょう。
ライタープロフィール
ペンネーム MISAKI
一級建築士。建築設計事務所に8年在籍、マンションから再開発まで様々な建築の意匠設計を手がける。
マンションリフォームマネージャーなる資格も有し、リフォームやリノベーションにも精通。
現在はIT系ビジネスに従事し、ネットを駆使して建築や不動産をはじめとする様々な情報を配信。
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