以前3Dプリンターで鋼橋を作るというプロジェクトを紹介したのを覚えていらっしゃるでしょうか。近年3Dプリンターの研究開発がどんどん進められています。出力する素材は、最近ではガラスの出力が可能となり、さらにはなんと衣服や食べ物までプリントできるようになっているんです。医療分野でも人工骨の整形や義手の作成、生きた細胞を使って臓器を作成する研究などが行われており、補聴器の製造にはすでに広く活用されているそうです。部品や模型、新たなデザインの試作品など小さなモノの製作が今までの3Dプリンターの主な活用方法でした。それは3Dプリンター自体が小さく大きなものが作りづらかったためです。研究開発は素材や出力方式だけでなく、機械の大型化も進められており、とうとう高さ12mの3Dプリンター「BIG DELTA WASP 12M」が開発されました。
（出典 : https://www.youtube.com/watch?v=CZMTQLVTJdA）
現時点で世界最大となる3Dプリンターを開発したのはイタリアのWASPという会社。WASPは発展途上国の住居問題を何とかしたいという目標で開発を続けていました。建設プロセスを機械化し、世界中のどこにでもある土を素材とすることで貧困な地域でも安価で住居を作り上げます。安価で建てるだけでなく、長期的に維持されていくこともWASPは重要視しています。強固な建物を建設するために様々な混合物の素材で実験を重ねました。そして、セメントと土と植物の種の混合物というのが一つの答えとして出されました。植物の種は、時間が経つと縮んでいってしまう土の特性の対策として混ぜられています。植物の種が土から水を吸い上げ、さらに根を張ることで強い構造となります。
土から素材を作りプリントを行うプロモーションビデオ
12mという世界最大の3Dプリンターは9月18日から3日間開催される「Reality of Dream」と題されたイタリアのイベントでお披露目されます。一体どのように動いて、どんな建物を作ってくれるのでしょうか。
（http://www.totalkustom.com/home.htmlより引用）
BIG DELTAはこれからお披露目ということで具体的な建築計画はまだ挙げられていません。ですが具体的な計画も進められています。フィリピンのルイスグランドホテルの一部として現在建設中です。建設に当たるのは以前に3Dプリンターでコンクリート製のお城を建てたAndrey Rudenko氏ら。プラスチックを素材とする小さな3Dプリンターを作ることから始まり、プリンターの大型化とセメントを素材として使えるように実験を重ねるなど、２年間をかけて完成されたという功績が、ルイスグランドホテルの支配人であるLewis Yakich氏に声をかけさせました。
今回プリントされる建物の大きさは10.5ｍ×12.5ｍ×3ｍ。リビングと寝室が二部屋あり、お風呂はなんとジャグジー付き。出力の素材としては、現地の砂や火山灰をセメントに混ぜたものが使われます。3Dプリンターによる建築は計100時間ほどだそうですが、機械のメンテナンスや配管・配線・鉄筋工事も行わなければならないため一度ではプリントしきれないそうです。こちらの動画で実際にコンクリートをプリントしている様子を見ることができます。
実使用できることが証明されたり、今回の経験による作業が効率化され時間の短縮や、コストが低く抑えられたりするなど、この計画が順調に進められれば世界で初の利用可能な商業用の建物として3Dプリンターの歴史に名を残すでしょう。ホテル支配人のLewis Yakich氏は今後も3Dプリンターで家を建てる計画を立てており、2年間で2000軒建てることを目標としています。フィリピンは低所得者向け住居の需要があり、早くて安く建てられる住居は発展途上国でもこれから人気が出るのではないかと予想されています。
模型など小さく複雑な造形物の製造が注目されてきた3Dプリンターですが、高さ12mという大きなものが開発されて住居の建設など製造の幅が大きく広がりました。安価で早く住居を建てられる技術は、発展途上国での住居の建築だけでなく被災地での仮設住宅の建設にも注目されています。そしてとうとう利用可能な建物の建設が始まりました。他にも3Dプリンターを使った様々な建築のアイデアが生み出されており、これからの発展に目が離せません。
WASProject
http://www.wasproject.it/w/en/
3D Concrete House Printer
http://www.totalkustom.com/home.html
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3DPrint.com
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