『となりのトトロ』の草壁家は大正文化を反映した凄い建造物だった!?

有名な建築家やデザイナーの方が設計された芸術的な建物などは、ネットで調べると多く出てきますが、アニメーションの中で描かれている家や建物に注目すると、色々な物が見えてくる場合があります。

今回、ご紹介したいのはスタジオジブリの人気作品『となりのトトロ』です。本作は1988年に公開された長編アニメーション作品で、明確な時代設定はされていないのですが「テレビのない時代」というのが作中の時代となっています。そして、ジブリの長編アニメーション作品のキャッチコピーを担当しているコピーライターの糸井重里さんが主人公姉妹のお父さん役の声の出演をされています。ちなみに、糸井さんが本作に付けたキャッチコピーというのが「このへんな生きものは まだ日本にいるのです。たぶん。」でした。
この作品はテレビなどでも度々放送されているので、一度は見たことが有るという方も多いと思います。

そんな『となりのトトロ』に登場するサツキちゃん(草壁サツキ)とメイちゃん(草壁メイ)が引っ越してきた家を改めて見てみると、こんな面白い建物だったんです!

写真1草壁家 (c) 1988二馬力・G

画像で見ると、このような外観の建物となっています。手前側の白い建物は洋風ですが、奥の方は古き良き日本家屋という印象の造りになっていて、まさに和と洋が無理やりくっついた様な特殊な作りですよね!

作中では、寝床や調理場、居間などの居住スペースは和風な造りとなっていて、大学の非常勤講師と翻訳を仕事としているお父さんの作業場が洋風という描写がありました。一見、このような特殊な建物はアニメーションの世界にしか登場し得ないと思ったそこのアナタ。実はこのような造りの建物は「文化住宅」と言われ、大正中期から昭和初期辺りに登場した歴史的建築物なのです。

文明開化が起こり、それまで閉鎖的な発展を遂げていた日本文化に加えて、西洋の文化が色濃く日本に広がり初めた時代。色々な物が西洋の影響を受ける中、建築物もその例外ではなく、この様な当時の日本の変化を反映したような建物も出てきたそうです。

文化住宅は元々、1922年に上野公園で開催された「平和記念東京博覧会」に14棟のモデルハウスを展示され、それがきっかけで一般家庭にも文化住宅(「洋館付き和風住宅」「近代和風住宅」とも言う)が普及していきました。東京では下落合と洗足に当時、文化住宅が建ち並ぶ「文化村」と呼ばれる“洋風住宅街”が出来たほど広がりを見せていました。

他にも、この頃から木造住宅のから鉄骨やコンクリートを用いた住宅も増え、今の日本の住宅事情のターニングポイント的な時期でもあったそうです。

そして、この草壁家ですが2005年に開催された愛知万博で実際に建築され、人気パビリオンとして公開されていたのですが、2015年現在でも見ることができます。有料で予約が必要なのですが、文化住宅が建築されていた当時の技術に則って造られた本格的な建物なので、技術的な面でもかなり見応えがあります。

今年の頭には「ジブリの立体建造物展」という展示イベントも行われ、建物の描写へのこだわりも素晴らしいジブリの作品ですが、ふと目にする絵画やアニメ作品の建造物に目を向けて見ると、意外な発見があるかもしれませんよ!

【サツキとメイの家 公式サイト】
http://moricoro-park.com/shisetsu/satsukitomei/

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